羞恥により、宝石のように大きな瞳がかすかに潤む。それはまさに恋する乙女そのものの表情で、対峙するメリフェトスを十分すぎるほどに動揺させた。

「……っ」

 メリフェトスは息を呑み、慌てて目を逸らした。ちなみにアリギュラは知る由もないことだが、この時彼がうっかり彼女を抱きしめたい衝動に駆られたことは、永遠の秘密である。

 温かなオレンジの光の中、風に揺れるメリフェトスの髪がきらきらと輝く。その下で、彼は秀麗な顔を困ったようにしかめる。

 彼の中で、どんな葛藤があったのかはわからない。けれども彼は、やがて観念をしたかのようにふっと笑みを漏らした。

 こほんと、わざとらしい咳払いをひとつこぼす。それから彼は、切長の目を逸らしたまま「――……あー」と言い淀んだ。

「――……我が君。そういえば私、もうひとつ、あなたに隠していることがありました」
 
「そ、それはなんじゃ?」

「あまり驚かないで、聞いていただきたいのですが」

 妙にくどく、メリフェトスが念を押す。