容赦なく手を伸ばし、クレイトスの襟元を掴む。鋭く怒気を放って睨みつけるアリギュラに、しかしながら女神クレイトスは、思いの外整った顔ににんまりと笑みを貼り付けた。
「……あれれぇ? 情熱的ですねぇ〜。無事エンディングを迎えたのに、どうしてそんなに怒ってるんですかぁ〜?」
「惚けるな。どうせ、ぜんぶここから見ていたんだろう?」
「見ていましたよ〜? それが観測者としての、女神のお仕事ですからっ」
「御託はいい。さっさとよこせ」
赤い瞳が光ると同時に、パリッと乾いた音が響いて、小さな雷が額から迸る。稲光をいつでも放てるように魔力を込めながら、アリギュラはクレイトスの服を掴む手に握りしめた。
「メリフェトスを返せ。今すぐ奴を生き返らせろ」
ピンと張り詰めた沈黙が、二人の間に流れた。
無意識のうちに、アリギュラはごくりと喉を鳴らす。
ゆるゆるの三つ編み頭に、ダボダボの服とメガネというくつろぎスタイル。そんなふざけた格好で現れたにも関わらず、女神が放つ緊張感はカイバーン以上だ。