がくがくと揺さぶってくるメリフェトスを、アリギュラはぺりっと引き剥がす。腕を組んだ彼女は、青い顔で慌てる臣下をじろりと睨みつけた。
「『まほキス』は無事エンディングを迎えたわ! それは、わらわが女神に確かめた。だから、無駄なことでそんなに慌てるな。騒がしゅうて敵わんわ」
「は? 女神に確かめた、ですって?」
眉をひそめたメリフェトスに、アリギュラは内心「しまった!」と叫んだ。けれども、後悔先に立たず。そーっと逃げようとする彼女の肩に、メリフェトスが手を置いた。
「――我が君? 私に何か、隠してません?」
「ま、まさか! ナニモ、カクシテオラヌゾ?」
「ものすごく台詞がカタコトなんですが!?」
逃げようと躍起になるアリギュラと、決して逃がさないと羽交い絞めにするメリフェトス。王と臣下の、あまりに不毛な攻防がここに始まる。
ジタバタと暴れながら、アリギュラは一月前のことを思い出していた――。