「どうして私、生きているんでしょう?」
彼が問いかけたその時、一陣の風が彼の前髪を揺らした。
当然と言えば、当然すぎる疑問。それに首をひねって、魔王軍一の知将は困ったように空を睨んだ。
「いや、だって私、女神と間違いなく取引したんですよ? 魔王サタンを倒し、アリギュラ様の魂が無事にこの世界に馴染んだのを見届けたら、大人しくこの世界から退散しますって。なのに、どうしてまだ私、ここにいるんでしょう?」
「あー……。なんでじゃろうな?」
曖昧に笑って、アリギュラはすっと目を逸らす。けれどもメリフェトスは、それに気づく余裕もないらしい。しきりに首をひねって、うんうんと考え込んでいる。
「やっぱり気が変わったとかでしょうか? それとも、初めから私をこの世界に残すつもりでいた? ……いや。あの女神、相当ぶーぶー文句垂れてましたからね。嘘を吐く理由もこれといって見当たりませんし」
そこまで言ったところで、はっとメリフェトスは目を見開いた。そして、カイバーンの軍団が魔王城に押し寄せてきたときと同じくらい慌てた様子で、がっとアリギュラの肩を摑んだ。
「ま、まさか! サタン――カイバーンめが、生きているのでないでしょうか!? 『まほキス』はエンディングを迎えておらず、だから私も未だ続投ということでは……」
「だー、もう! 落ち着け、メリフェトス!!」