くしゃりと丸められた紙が、綺麗な弧を描いて宙を舞う。ぽすんと王子の頭に命中したそれは、ころころと床に転がった。

「……あのですね、お二方。その寸劇はおやめくださいと、何度言ったか覚えておいでですか?」

 笑顔のまま、ぴくぴくと口元を引きつらせる眉目秀麗な男が、となりの机にひとり。美しく艶を放つヘーゼルナッツ色の髪に、モノクルの奥に覗く青紫色の瞳。詰襟の宗教服をかっちりと着こなす姿には、そこはかとなく几帳面さをのぞかせる。

 頬杖をついて王子を睨みながら、メリフェトスは笑顔でキレるという器用なことをした。

「言っておきますけど私、死んでませんからね!?」