頬杖をつき、アリギュラがぼおっと窓の外を眺める。ちょうど、風に吹かれた落ち葉が、ひらひらと木から舞い落ちるのが見えた。

 そうやって、目の前に開かれた分厚い本には見向きもせずにいると、ふいに横から肩をゆすられた。

「…………ギュラ様。アリギュラ様!」

「うわっ!」

 耳元で大きな声を出され、思わずアリギュラは飛び上がる。こやつめ、おどろかせおって。そう文句を言おうと顔を向けたアリギュラは、ぷくりと頬を膨らませるキャロラインの姿に、肩を落として嘆息した。

「なんだ。キャロラインか」

「なんだ、じゃありませんわ、アリギュラ様! さっきから、ずっと上の空でしてよ!?」

「うむむ」

 縦ドリルをぶんと揺らして怒るキャロラインに、アリギュラも仕方なく唇を尖らせる。すると、向かいのテーブルから、本日の講師役であるジーク王子がひらひらと手を振った。

「仕方ないよ、キャシー。私の教え方が、きっと上手ではないのだろうね」

「そんな風に甘やかしてはいけませんわ、ジーク様っ」

 ずいと身を乗り出し、キャロラインは人差し指を立てる。そして、非難がましくアリギュラを覗き込んだ。

「エルノア国のことや、世界のこと。たくさん知っていただかないと、いつまでも旅に出させてあげませんからね!」