滑らかな頬にはところどころ掠り傷が走り、艶やかなヘーゼルナッツ色の髪にも砂埃がついてしまっている。それでも、美しく整ったメリフェトスの表情は、眠っているかのように穏やかだ。そんな彼の頬に、アリギュラはそっと手を添えた。
「『セカイを救う魔法のkiss』。げえむは確か、そんな名前だったな」
さらりと、指先で彼の唇をなぞる。当然、彼からの反応は何もない。だからこそ彼女は、獲物に狙いを定めるハンターのように、すっと赤い瞳を細める。
そうして彼女は、眠るメリフェトスの唇をめがけ、静かに身を屈めた。
「――お前の世界をわらわが救ってやる」
二人の唇が、ゆっくり重なる。
――何か、温かなものが、アリギュラの胸の中ではじけた。
構わず、アリギュラは溢れる魔力を彼に注ぎ続ける。
そうやって、清らかであたたかな光がふわりと二人を包み込んだ――。