仕方なくそろりと目を開けば、困ったような顔でメリフェトスが見上げていた。
「お願いです。あなたに隠し事をしたまま、逝きたくはない」
「っ!」
息を呑み、アリギュラは抗議しようと口を開きかけた。けれども、真摯に見つめる青紫色の瞳に、文句は溶けて消えていってしまう。
最終的に彼女は、小さく頷いた。ほっと吐息を漏らした彼は、続きを話し始める。
「――前にもお話ししたように、私は直接この世界に飛ばされたわけではありません。一度、この世界の創造主である女神クレイトスのもとへ飛ばされ、今の体を得ました。その理由が想像つきますか?」
「いや……」
「私が、女神にとってイレギュラーな存在だったからです」
彼の中では、とっくに整理がついている話なのだろう。そう思わせるほどに、メリフェトスの声は普段と変わらない。
「女神の用意したシナリオにのっとり、聖教会は召喚魔術を発動させました。けれどもそれは、あくまで『聖女』を召喚するためのもの。魔術は成功し、無事あなたが召喚された。けれども女神にとって想定外だったのは、一緒にいた私まで召喚されてしまったことです」
メリフェトスが女神の前で目を覚ましたとき、女神はひどく慌てていた。こんなおまけがくっついてくるなんて、完全に予想外だ。アーク・ゴルドに送り返そうにも、あちらの体はすでに使い物にならない。いったいこのお荷物を、どうしてくれよう。