こやつ、わらわをクッションにしやがったな。そのように頬を膨らませ、アリギュラは動かないメリフェトスの頭をぺしぺしと叩いた。
「おい。どくんじゃ、メリフェトス。わらわのか弱い体をクッションにしようとは、おぬしも良い度胸じゃな」
「…………ふふっ」
「おーい。何を笑っている? わらわはどけと言ったのだぞ? 聞いているのかー?」
アリギュラの膝に顔を埋めたまま、なぜだかメリフェトスはくすくすと笑う。だんだんと恥ずかしくなってきたアリギュラは、頬を赤くしながら、ゆさゆさと部下を揺すぶった。
「わらわの膝で笑うな! 息があたってくすぐったくて敵わんぞ!」
「申し訳ありません、我が君。我ながら、悪くない最期だと思いまして」
「……は?」
動きを止めて、アリギュラはまじまじと膝の上のヘーゼルナッツ色を見下ろした。
目を瞬かせるアリギュラの視線の先で、メリフェトスが寝返りを打つ。その動きは、こころなしか緩慢だ。にもかかわらず、こちらを見上げたメリフェトスの表情は、何かに満足したように穏やかだ。