「んなっ!? それは!!」

「アリギュラ様に授けられた聖剣だ!」

細剣の先で、聖剣の預かり手――メリフェトスが、暴風に髪を靡かせながら叫ぶ。彼にぴたりと寄り添うように、アリギュラも光の中で剣に手を添えている。

 この世界の聖剣、光の剣。聖女だけが授けることができる、魔王を倒すための必殺の剣。なぜそれが、ここにある。

愕然として、カイバーンは声を裏返せた。

「バカな! その剣は……!」

「聖女のキスがなければ使えない、じゃろ?」

 にやりとアリギュラが笑う。およそ聖女には見えない笑みのまま、彼女は勝ち誇ったように告げた。

「残念だったな、カイバーン! 下準備は既に、終わっていたんだよ!!」

〝したいと思ったから〟

 蘇るのは、慈しむような切ない眼差し。

〝そう言ったらきっと、あなたを困らせてしまいますね〟

(グッジョブだ、メリフェトス!! ワケはわからんかったが、ここで活きてくるとは流石わが右腕じゃ!!)

 内心高笑いしながら、アリギュラはメリフェトスも掴む聖剣にさらなる力を乗せる。