敵わない。本当にそうだろうか。

 カイバーンにとってアリギュラが本当に脅威となり得ないのであれば、放っておけばいい。なのに奴は、わざわざ手の込んだことをしてアリギュラをこんな場所にまで呼び出した。

(何かあるはずだ。カイバーンが、わらわを邪魔に思う理由が!)

 だが実際のところ、それは一体なんだ? 大幅に戦闘力があがったカイバーンと違って、アリギュラの力はほぼ据え置きだ。メリフェトスに至っては、魔力がアーク・ゴルドにいた頃の半分ほどに減ってしまっている。

(ん? メリフェトス?)

 体を捻って鋭い一撃を流しつつ、アリギュラはふと気になった。

 そういえばカイバーンは、なぜメリフェトスだけを攫ったのだろう。アリギュラと話をしたかったのであれば、最初から二人とも攫えばいい。

 ルーカスの言う通り、聖剣の力を目印にメリフェトスを攫ったとしても、そもそも聖剣の力の出どころはアリギュラなのだ。アリギュラだって同様に、よい目印になっていたはずなのに。

 そこまで考えたところで、アリギュラはハッとした。

 なるほど、前提が間違っていた。カイバーンがメリフェトスを攫ったのは、アリギュラを呼び出すためじゃない。

アリギュラとメリフェトスに、()()()()する間を与えないためだったんだ。