(いったい、聖女とはなんじゃ!?)
半ばキレ気味に、アリギュラは前を行く背中を睨む。そして、ふと気になった。
この背中――纏う空気というべきか。どことなく、誰かに似ている気がする。
だが、アリギュラに人間の知り合いはいない。いや、殺し合いをした仲である勇者一行を知り合いと呼ぶならそうだが、少なくともカイバーンとこの男は似ていない。
そもそも、この男から感じる『何か』は、アリギュラにとって身近なものな気がする。それこそ、常日頃そばにいた『何か』のような……。
道をまっすぐ行くと、豪奢な扉の前にたどり着く。扉の両脇には、白い礼服を着た巫女ふたりが控える。彼女らが恭しく頭を垂れるのに軽く頷いて、男は扉を押し開いて中に入るようアリギュラに促した。