かつてアリギュラを脅かした宿敵も、こうなってみると憐れなものだ。歪んだ正義感、とでも言えばいいだろうか。宿敵を破り、新しい世界の礎を築いたはずの英雄。けれども彼は絶望し、そんな世界を生み出した新たな『宿敵』にターゲットを変えた。
(『魔王』の次は、『人間』か。これが、勇者の慣れの果てとはな……)
嘆息し、頭を振る。それから彼女は「して、」と赤い瞳でカイバーンを見上げた。
「こんな手の込んだことをして、わらわを呼び出したのじゃ。そろそろ要件を言え。まさか、おぬしの不幸自慢を聞かせるために呼び出したのではなかろうな?」
ディルファングを振り、構える。切っ先をカイバーンに向けながら、アリギュラは挑戦的に微笑んだ。
「アーク・ゴルドでの決着をつける。そういうつもりだったのなら、喜んで相手をするぞ。なにせわらわも、それは望むところだったのだからな」
だが、鋭い剣を突き付けられながらも、カイバーンは肩を竦めるだけだった。
「君と戦うだなんてとんでもない。君に来てもらったのは、むしろその逆だ」
「……何?」
「アーク・ゴルドの魔王、アリギュラ。私は君と、手を組みたいんだ」