あまりにもっともな指摘に、アリギュラは「むむっ」と唇を尖らせて言葉を呑みこむ。するとカイバーンは、広げて笑みを深めた。

「……だが、私は異界の魔王となれたことを喜んでいるんだ。それが、なぜだかわかるか?」

「ああ。まるでさっぱり、わからんな」

 ふんと鼻を鳴らして、アリギュラは腕を組んだ。

「正直、わらわはいまだに、この世界の連中に聖女サマなどと呼ばれることに違和感をもっている。どういう心境の変化か、参考までに教えてくれ」

「人間どもを殺せるからだ」

 かつて正義の光を宿していた目を見開き、カイバーンは邪悪に笑った。

「故郷を追われ、仲間を殺され、私は何もかもを奪われた。連中の為に、世界を救ったのにだ。今なら、君たち魔族がどうして人間を憎んでいたのかよくわかる。人間は愚かだ。そして醜い。奴らは、この世から滅ぼさなければならない種族だ」

「……かねがね同意するが、一応教えといてやろう。ここは異界だ。お前が憎む、悪しきアーク・ゴルドの連中はどこにもいないぞ」

「世界の違いなど関係ない。私は、私の使命として、人間どもを殲滅する。この地上から、忌まわしき人間どもを、一人残らず消し去ってやるのだ!」

 半ば呆れ、半ば関心をし、アリギュラは目を細めた。