「死んだ上、四天王まで剥奪とか、さすがに私が可哀そうでしょうが……」
「お、おぬし! そんな軽口が叩けるくらいなら、わらわを驚かすな! てっきり、てっきりわらわは……!」
「死にませんよ。王の許可もないのに。人間の体ですので、少々回復には手間取りましたが」
壁に手を付きながら、メリフェトスが立ち上がる。体の傷が、みるみるうちに癒えていく。どうやら、アーク・ゴルドから持ち込んだ魔力を使って、体の再生能力を高めているようだ。
「それより、我が君。ひとつ厄介な報告がございます」
ヘーゼルナッツ色の髪の間から、メリフェトスが奥の暗闇を睨む。青紫色の瞳を細めて、彼は苦笑いを浮かべた。
「この世界の魔王の正体がわかりました。……少々、我々に分の悪い相手ですよ」
コツリと、高い足音が天井に響く。何か強力な魔力の持ち主が、こちらに近づいてくる気配がある。となりでメリフェトスが、姿勢を低くして身構える。それをちらりと見てから、アリギュラは黒い髪を揺らして暗がりに向き直った。