近づいたアリギュラは、彼の痛々しい姿に思わず表情を歪める。汚れひとつなかった純白の装束は薄汚れ、あちこち擦り切れている。隙間から覗くのは、血の滲む切り傷。ひとつひとつは大きな怪我ではないが、ぐったりと壁に寄りかかる姿が、戦闘の激しさを窺わせた。
どくりと、心臓が嫌な音を立てる。それには気づかなかったふりをして、アリギュラはメリフェトスの隣にしゃがみこんだ。
「起きろ。わらわが来たぞ。おぬしの王が、わざわざ迎えに来たのだぞ」
肩を軽く揺するが、返事はない。重く閉ざされたままぴくりともしない瞼に、アリギュラは焦りを募らせた。
「おい、起きろ! こんなところで死ぬなど許さぬぞ!! もしそんなことがあれば、おぬしから四天王の座を剥奪して、永遠にわらわの前から追放して――……」
「……無茶、言わないでくださいよ」
微かな声と共に、メリフェトスの手がぴくりと動いた。
「メリフェトス!」
アリギュラが表情を緩めるのと、メリフェトスが目を開けるのとが同時だった。アリギュラの手を借りて身を起こした彼は、忌々しそうに額を押さえて顔をしかめた。