「まさか我が君よりほかに、この世界でその名を呼ぶ者がいるとはな」
傷を押さえる手に、紫炎を纏う。そうやって止血してから、メリフェトスは鋭い鉤爪を光らせ、ぱっと手で宙を払った。
「魔王軍四天王が長、西の天、メリフェトス! 我が王、アリギュラ様をお守りするため、この地に降りた!」
高い天井に、メリフェトスの声が響く。そうやって自ら名乗ってから、「して、」と彼は美しい切長の目を細めた。
「貴様は誰だ。戦の前の名乗りには、名乗りをもって答えるのが戦の作法。貴様もアーク・ゴルドから来たのなら、それぐらいは知っているはずだ」
――アーク・ゴルドの関係者。自分とアリギュラのほかに、そんなものがこの世界にいるのは初耳だ。しかし相手は、メリフェトスを魔王軍四天王のトップだと言い当てた。そんな発言が飛び出すあたり、相手もアーク・ゴルドから召喚されたとしか思えない。
すると、暗がりの奥からくつくつと笑い声が響いた。