途端、メリフェトスが手をついたところを起点に、大地に巨大な亀裂が走る。轟音を立てて迫っていく亀裂に、火の矢を放った何者かが飛びのく気配がある。

 それこそメリフェトスの狙い通りだ。すかさず地を蹴って、相手が逃げ込んだ場所へと飛びかかる。素早く肉薄した彼は、鋭利な尻尾を振るって強烈な一撃を相手に叩き込んだ。

 手応えはあった。けれども、すんでのところで受け止められたようだ。すぐに尻尾を引いたメリフェトスは、ニ撃、三撃と続けざまに闇の中に撃ち込む。

 けれども突如、ぶわりと魔力が膨らむ気配があった。とっさに体を捻ると、今しがた彼が避けた空間を禍々しい光の矢が駆け抜けた。

「っ、ちっ!」

 なんてパワーだ。空気を焼き尽くす熱に、メリフェトスは舌打ちした。獲物を仕留め損なった光の矢は、岩の壁へと当たり、その表面を赤く溶かす。もろにあたれば、とても無事では済まなかっただろう。