「え!?」と驚くルリアンに、ジーク王子も頷いた。

「おそらくどこかから私たちを見ていて、闇の魔力でメリフェトス殿を捕えたんだろう」

「あの神官は、体の中に聖剣を持っている。多少距離はあっても、目印としては申し分なかったでしょうね」

 溜息一つを吐き、ルーカスは悔しげに目を細めた。

「なんにせよ、彼を救い出すことは不可能ですよ。伝承によれば、聖剣――光の剣だけが、魔王サタンを打ち破ることが出来るんです。聖剣ごとメリフェトス殿を奪われた以上、サタンと戦う術は皆無に等しいんですよ」

「そんな」

 ルーカスの言葉に、キャロラインが瞳を揺らす。そして、気づかわしげにアリギュラを見た。

 キャロラインたちが集まってきてからというもの、アリギュラはずっと押し黙っている。浮かぶ文字にも、続く地図にも、紅の瞳をじっと向けるだけだ。

(アリギュラ様……)

 今も食いつくように地図を眺めているアリギュラの姿に、キャロラインはぎゅっと胸が痛んだ。

 彼女が聖女として召喚されてから、早数か月。今でこそ、こうしてキャロラインたちと親しくするようになった彼女だが、初めのうちは聖教会に保護されたまま、誰ともかかわることがなかった。

 そんな頃から唯一そばに仕え、アリギュラを支えた存在。それが聖教会の若き神官、メリフェトスだった。