メリフェトスが連れ去られた、その直後。

 何事かと集まってきた攻略対象者に囲まれつつ、アリギュラはころりと転がった黒い水晶に触れてみた。すると、水晶から光が漏れ、このような文字が宙に刻まれた。

 もう一度触れると、煙のように文字が溶ける。代わりに浮かぶのは印のつけられた地図のようなもの。どうやら『座標の場所』とやらを示しているらしい。

「これって、まさか」

 地図を覗き込み、キャロラインが顔を青ざめさせる。その隣から、宮廷魔術師のクリスが手を伸ばす。水晶に触れた彼は、もともと青白い顔をさらに曇らせた。

「……闇の魔力を感じる。メリフェトス殿が消えたあたりからも」

 クリスの言葉に、ジーク、そしてルーカスの二人がはっとしたように顔を見合わせる。いまいち理解しきれなかったらしいルリアンが、焦れたようにクリスに尋ねた。

「ちょっと、はっきり言ってよ。あの神官はどこに行ったの? なんで消えちゃったわけ?」

「魔王だよ。魔王サタンに連れ攫われたんだ」

 クリスに変わって答えたのは、近衛騎士のアランだ。今は、へらへらとした色男ぶりはなりを潜め、剣の束を軽く握り、険しい顔で地図を覗き込む。