それでも腑に落ちないものがあって、アリギュラは躊躇いつつも尋ねた。
「良いのか? おぬしはそれで」
「と、いいますと?」
「おぬしは、人間にいろいろと思うところがあるだろう?」
ぴたりと。メリフェトスが動きを止める。モノクルの奥でそっと伏せられた切長の目を、アリギュラは静かに見つめる。
はじめて会ったとき、メリフェトスは死にかけていた。大型ギルドに襲われてひどい手傷を負ったところを、運悪く別のギルドに遭遇して殺されかかっていたのだ。
なんとなく見ていられなくて彼をそばに置くようにしたが、それからもメリフェトスは何度か人間に狙われていた。アリギュラが共にいたから死にかけることはなかったが、反撃するメリフェトスからは、人間への強い憎しみが見て取れた。
「そう、ですね」
紅茶を一口飲んで、ティーカップを置く。そうやって気を取り直してから、メリフェトスは小さく首を振った。