だが。


「どぉりゃっしゃああああああ!!」

 凄まじい旋風と、緊張感の欠けた雄叫び。何事かと『彼』があたりを確認する間も無く、人間たちの悲鳴が響き渡った。

「あ、悪魔だ! こいつ仲間がいやがった!」

「小さいくせになんてパワーだ!?」

「や、やめろ、はなせ! はなして!」

「黙れ! 手負いに鞭打つ腐れ外道どもがー!」

 逃げ惑う人間たちを相手に、乱入してきた誰かが暴れ回る気配がある。視界を奪う土煙と、響き渡る怒声と悲鳴。かと思えば、不意にあたりは静かになる。

 やがて、ふわりと風が待って土煙が晴れ、仁王立ちする小さな背中が豪快に笑った。

「は、は、は! 連中を投げ飛ばしてやったわ! せいぜい、ぺちゃんこにならないよう頑張るんじゃな!」