「けどそれは、憧れとしてだ。聖女様の圧倒的な強さに対してというか、風格に対してというか……。とにかく、僕が君に抱く感情と、聖女様に向ける感情。それは全く違うものだと、君には知っていて欲しいんだ」
「そ、それって」
とくん、と胸が跳ねる。視界が急速に、きらきらと輝きに満ちていくような錯覚がある。その輝きの中心で、大好きなジーク王子が照れ臭そうに微笑んだ。
そのときだった。
「よきよきじゃな! これで万事解決じゃ!」
不意に近くから響いた声に、キャロラインとジークは握り合わせていた手を慌てて解いた。声のした方をみれば、これでもかというほどにまにまとにやけた笑みを浮かべたアリギュラがいる。
遠慮もなく顔を覗き込む悪魔な聖女に、キャロラインは真っ赤になって抗議する。
「た、立ち聞きは人としてマナー違反だと思いますわ!」
「立ち聞きも何も、わらわの横でピンクい空気を出してきたのはおぬしらじゃろう。てっきり、わらわに見せつけてるのかと思ったぞ?」
そう言われると、ぐうの音もでない。返す言葉もないまま、羞恥に縮こまるキャロライン。けれどもアリギュラは、思いの外、優しい笑みを向けた。