(アリギュラ様、私を庇って……?)
どきどきと、胸の鼓動がわずかに早くなる。ぽーっと、キャロラインは惚けたようにアリギュラを見つめる。と、そのとき、「キャシー!」とジーク王子に呼びかけられた。
我に返って瞬きするキャロライン。けれどもすぐに、彼女は驚いて目を丸くすることになる。婚約者であるジーク王子が、深々と頭を下げたからだ。
「すまなかった。君に、なんと詫びたらいいか」
「じ、シーク様!? どうされたのですか? どうか、頭を上げて……」
「いや。私がこうしたいんだ」
婚約者といえ、公の場で王子が臣下に頭を下げる。そのことにキャロラインは慌てたが、ジーク王子は頑なだった。ようやく頭を上げた時、彼は申し訳なさそうに眉根を寄せた。
「先程私は、ほんの少しだけ君を疑ってしまった。婚約者として君を信じ、誰よりも味方であるはずの私がだ。そのせいで、君を孤独にしてしまった。どう、君に詫びたらいいか……」
「ジーク様……」
わずかに息を呑み、キャロラインは王子を見つめる。ややあって、キャロラインは柔らかく微笑み、見事な縦ロールの髪を揺らして首を振った。