まるで魂が抜けてしまったように放心し、動けなくなってしまったヘレナとその取り巻きたち。放置しておくわけにもいかないのでと、彼女らが別室に運ばれていったあと。

「しゃべった、しゃべった。一仕事終えたあとのケーキはうまいな!」

 気分も晴れやかに、アリギュラはクリームのたっぷり乗ったケーキを頬張る。その横で、メリフェトスがやれやれと嘆息した。

「やりすぎです、我が君。聖女はあんなに、びかびかと室内で雷を落としたりしません」

「ちゃんと威力は静電気レベルにしておいたぞ? なにより早く場が収まったのだからよいではないか」

「しかし、あの収め方は、いささか魔王味がすぎるかと」

「魔王味もなにも、わらわは魔王じゃ。まごうことなき魔王じゃ」

 ……アリギュラとメリフェトス、ふたりの会話はキャロラインにまでは届かない。けれどもキャロラインは、アリギュラから目を離せずにいた。