恐怖に震え上がり何も言えなくなってしまったヘレナたちから視線を逸らし、アリギュラはキャロラインを振り向く。きょとんと瞬きする悪役令嬢に微笑んでから、アリギュラは優雅に白い足を組み替えた。

「わらわは、キャロラインを気に入っておるのだ。あの者はわらわに真っ向から挑み、何度砕けようと諦めず立ち上がってきた。あの者の強さを、わらわは称賛する。――そんなわが友のため、すべて偽りなく証言すると誓うなら、貴様らに恩情をかけるのもやぶさかではないな?」

「誓います! 必ず、女神様に掛けて!」

 限界を迎えたらしいヘレナたちが、悲鳴に近い声で叫ぶ。「ほーお?」とわざと焦らし、アリギュラは赤い瞳を細めて頬杖をついた。

「証言してくれるか。それは頼もしいのう」

「すべて真実をお話しします! ですから、命だけは……」

 涙で顔をぐちゃぐちゃにし、命乞いをするヘレナとその取り巻きたち。それを、アリギュラはしばしつまらなそうに眺めていた。かと思えば、ふいに彼女はにこりと笑った。