「そ、そんな、ちがっ……!」
「それと」
「きゃっ!」
尚も諦めが悪く足掻こうとするヘレナに、アリギュラが迫る。音もなく、宙に浮いたまま詰め寄られ、ヘレナとその取り巻きは腰を抜かしてその場に倒れこむ。そんな令嬢たちを冷たく見下ろし、アリギュラは歪んだ笑みを浮かべた。
「わらわが、そなたを貶めるために嘘の再現を流したと。おぬし、さっきそう言いおったな」
「そ、それは……」
「己惚れるなよ、小娘が」
びしゃああああん、と。アリギュラたちの頭上を一陣の閃光が駆け抜ける。悲鳴を上げるヘレナを無理やり上向かせて、アリギュラは赤い瞳に嗜虐的な色を浮かべた。
「一人では何もできず、底の浅い策しか練れない。粗末で矮小な貴様らに、なぜわらわが構わなければならぬ? 貴様らを始末したければ、わざわざ手間などかけぬ。この手で簡単にひねりつぶしてくれるわ」
「……あっ、ああっ」
「今だって、貴様らのつまらぬ告白に興味はない。わらわとしては、貴様にクリームではなく『覇王の鉄槌』を喰らわせてもなんら問題はなかった。……じゃが、おぬしらにはまだ、わが友の名誉を晴らすという役目が残っておるからな」