皆が唖然と見守る中、煙の令嬢たちはひそひそと囁きあう。
〝ヘレナ様……。本当にやるんですか?〟
〝当り前じゃない! あの忌々しいダーシー家に一泡吹かせるチャンスなのよ〟
〝でも、聖女様にまでご迷惑かけるなんて……。事が知れたら大変ですわ〟
不安そうな顔をする二人に、ヘレナと呼ばれた娘の人型が、ふんと鼻を鳴らす。
〝うまくやれば大丈夫よ! つべこべ言わずにやりなさい!〟
ぱんっと強く、ヘレナの人型が一緒にいるうちの一人の背中を叩く。促された令嬢の人型はためらいつつ前に進み出ると、ケーキの載った皿を手に聖女のもとへ急ぐキャロラインの後ろにつける。
どん、と。その人型が、キャロラインの人型を突き飛ばす。
悲鳴を上げて倒れたキャロラインの人型の手から、皿とケーキが飛んで行った――。