「私、見たのです。キャロライン様が、ものすごい目つきで聖女様を睨みつけているのを」

「さあな。わらわには痛くも痒くもなかったからな。さっぱり覚えがないわ」

「そ、それから! パーティの冒頭、聖女様のご挨拶のあとで、キャロライン様が聖女様に詰め寄っているのをはっきり見ましたわ!」

「わらわがはしゃいで、キャロラインをからかったときか。あの時のわが友は、ぷんすかと怒って大層可愛らしかったぞ」

 その時のことを思い出し、アリギュラはご機嫌ににしししと笑いを漏らす。雲行きが怪しくなり、集まったひとびとの間にも困惑が広がる。取り巻きのふたりも不安そうな顔をする中、茶髪の娘は必死に食い下がった。