――その随分前に、すでにアリギュラは飽きていた。

「おい。これはギャグか。ギャグなのか」

 三人組が糾弾し、見守る人々の間に動揺が走る、その裏で。アリギュラは呆れていた。盛大に呆れ果てて、傍らに控えるメリフェトスに不満を漏らしていた。

「どう見ても、怪しいのは急に湧いてきた3人共だろう。あの者らがキャロラインを突き飛ばし、騒ぎを起こして嵌めたのだ。それしきのこともわからないとは、ここの連中は阿呆か。揃いも揃って目が節穴なのか」

「まったくです。やはり人間とは愚かしい生き物ですね」

やれやれと肩をすくめるメリフェトスの横で、アリギュラは人間どもを一瞥する。そのまま何も言わずにそっぽを向いた主人に、メリフェトスは小首を傾げた。

「よいのですか? あの娘を助けなくて」

「必要ない。興がそがれたわ」

 さらりと黒髪をはらい、アリギュラは鼻を鳴らす。そして、失望に瞼を伏せた。