まじまじとメリフェトスを見つめるジーク王子。そんな彼に、頭にクリームとイチゴをつけたまま、メリフェトスは肩を竦めた。
「失礼。私のことは、どうぞお気になさらず」
「い、いや、しかし……。いや、わかった」
何か突っ込みたそうな顔をしたまま、ジーク王子は無理やりアリギュラたちに顔を戻す。そして、顔色も悪く呆然とする婚約者に問いかけた。
「キャシー、何があったんだ。メリフェトス殿、いや、聖女様に一体……」
「どうもこうもございませんわ!」
ジーク王子が姿を見せたことで、勢いづいたのだろう。先ほどまでキャロラインを糾弾していた娘たちが、今度は王子に訴えかける。
「今しがた、キャロライン様が嫌がらせで、聖女様にケーキをぶつけようとしましたの。幸い聖女様はご無事でしたが、そのせいでメリフェトス様があのようなお姿に……。この国の救世主である聖女様と聖剣の預かり手様に、とんでもない仕打ちですわ」
「お、お待ちください!」
ようやく我に返ったのだろう。キャロラインは慌てて立ち上がると、勢いよく首を振った。