その時、ざらりとした嫌な予感が、背筋を走り抜けていった。
とっさにアリギュラは身をひるがえし、振り向きざまに魔力で防御壁を張った。すると、見えない壁に飛んできた皿がぶつかり、がちゃりと割れて地面に落ちる。
ほぼ同時に、べちゃりという湿り気を帯びた音と、「ぐふっ」というメリフェトスの悲鳴が背後からした。
アリギュラの張った防御壁を飛び越えて、メリフェトスの方へ飛んでいってしまったのだろう。慌てて振り返れば、頭にイチゴを載せ、髪からクリームをしたたらせるメリフェトスの姿が目に飛び込んでくる。
真っ白のクリームまみれの、モノクル姿の美形。そんなシュールな光景に、アリギュラは「あー……」と瞳を泳がせた。
「す、すまぬ……」
「いえ……。避けれなかった私の落ち度ですから」
微妙な表情で、メリフェトスは首を振る。おかげで、先ほどまで二人の間に流れていたなんとも言えない空気は霧散したが、これはこれで気まずい雰囲気となってしまった。