大声で呼べば、さすがのメリフェトスも飛び上がった。目をぱちくりとさせ耳をさするメリフェトスに、アリギュラに呆れて目を細めた。

「落ち着け! なんじゃ、おぬし。ぶつぶつ、ぶつぶつと。呪いでもかけるつもりか」

「で、ですが、我が君……」

「言っておくがな、わらわが恋愛事に関心を持ったのは、単に知識に疎いからじゃ。経験もなければ知識もない。ならば、少しは勉強してみても良いかと。その程度の話じゃ」

「は?」と。今度はメリフェトスが間抜けな声を上げた。

「で、では、我が君。攻略対象者の誰かを好、っ、……興味を持ったというわけでは……?」

「んなわけなかろう。あんな小童ども、わらわはさらさら興味ないわ!」

 ぴしゃりと言い放ち、アリギュラが鼻を鳴らす。するとメリフェトスは、目に見えてほっとした顔をした。安堵のため息を吐く腹心の部下に、アリギュラはますます変な顔をした。

「おぬし、変じゃぞ? まさか本気で、わらわが連中に恋慕したと思ったのか?」

「は、はは。私、すっかり早合点をしてしまいまして……」

「四天王のトップともあろうおぬしが慌ておって、情けない。――よもや、わらわが連中に取られてしまうと、嫉妬したわけでもあるまい??」

「はははは。まさかそんな……」