「あの二人など良いぞ? 目が合っただけではにかんだり、やたら赤面してみたり。うむ。愛いな、愛いな。見守り甲斐があるというものじゃ」

 目をキラキラさせて、アリギュラはうっとりと頬を染める。その視線の先では、たしかに若いカップルが、頬を染めあいながら初々しく踊っていた。呆れたメリフェトスは、嘆息して肩を竦めた。

「世界の半分を収めた魔王が、人間どもの恋路を盗み見てお楽しみとは……。だいたい、そんなもの見て何か楽しめるのですか?」

「よ、よいではないか、ちょっとくらい! ……おぬしの言うように、わらわは恋愛事とは無縁だったからな。ここにきて、ちょっくら興味が出てきたのじゃ」

 ――今度こそ、メリフェトスは息を呑んだ。