(気に入っていた? 我が君が、たかだか人間を……)

 顔をしかめつつ、メリフェトスは首を振った。

 自分は一体、何に動揺しているのだろう。勇者の在り方を、愉快に思っていた。アリギュラが言ったのは、そういう意味だ。それ以上でもそれ以下でもない。だというのに、どうしてこんなにも、胸がざわつくというのだろう。

 そんなメリフェトスをよそに、アリギュラは思い出したようにぽんと手を叩いた。

「気に入ったといえばそうじゃ。人間どものパーティとやらも、わらわは気に入ったぞ」

「このような気取った宴をですか?」

「出席するまでは馬鹿にしておったが、悪くない。飯は上手いし、酒も上等じゃからな」

 ご機嫌にグラスを突き出すアリギュラに、メリフェトスは苦笑をする。元の姿の頃よりも大分幼くなったため、そうやって酒を手に寛いでいるとチグハグ感がすごいのだが、メリフェトスはそこには目を瞑ることにした。

「なるほど。我が君らしいお答えですね」

「それにじゃ。ここで人間どもを眺めるのも存外面白い。パーティとやらは愉快じゃな。どこかしこで、恋の駆け引きが行われておる」

「…………はい?」