ふふんと笑みを漏らし、まほキスの悪役令嬢キャロライン・ダーシーは、婚約者であるジーク王子とともにホールの最奥に向かう。これから、会のはじめとして王子とともに出席者に向けた挨拶を行うのだ。
ちなみに今日のキャロラインのスタイルは、王子の瞳の色に合わせた、ロイヤルブルーのドレス。きゅっと締まった腰に、ふわりと広がる裾。もちろん、髪型は気合の入った縦ロール。どこから見ても完璧な、ザ・戦闘モードなスタイルである。
そんなキャロラインには、今宵、大きな目標がある。
(いいですわね、キャロライン。私の今日の目的は、打倒☆聖女、打倒☆アリギュラ様! 今宵、未来の王太子妃としてふさわしい姿をジーク様にお見せすることで、ジーク様の頭からアリギュラ様のお姿を追い払って差し上げるのですわ!!)
ふんすと両手を握りしめ、キャロラインは決意を新たにする。
そのために、父にお願いをして今夜のパーティに投資をしてもらったのだ。ジークの婚約者としてキャロラインがパーティの主を立派に勤め上げたなら。きっとジークも、キャロラインこそが自分にふさわしい相手だと目を覚ましてくれるだろう。あわよくば、恋仲というよりは戦友に近いような、今の関係も少しは変えることができるやも……?