「アリギュラ様、我らが聖女様!」
先に口を開いたのは、ジーク王子だった。初めて会った時と変わらず、美しい金髪の下で輝かしい笑みを浮かべた彼は、今日も今日とてキラキラと目立っている。
(なるほどな。改めて見ると、攻略対象者らしさがプンプンしとるな)
呆れ半分、感心半分に、アリギュラはジーク王子を見る。人間の娘子の趣味などわからないが、これほど顔がよく、おまけに王家の生まれとくれば、女たちは放っておかないだろう。もっとも顔だけなら、メリフェトスも十分負けてはいないが。
と、そんなことを思っていた矢先、唐突にジーク王子が跪いた。胸に手を当てた彼は、戸惑うアリギュラを、うるんだ青い瞳で見上げた。
「ああ、聖女様。本日お会いできるのを、大変楽しみにしておりました……!」
なんだか、反応が大袈裟じゃないか。そのように疑問に思うアリギュラだったが、衝撃はそれだけで止まらない。ジーク王子はさっとアリギュラの手を包み込むと、熱っぽくアリギュラを覗き込んだ。
「っ!」
驚いたのはアリギュラだけではない。後ろで、メリフェトスもぎょっとしているように感じる。