意地悪く言って、メリフェトスがすっと人差し指を唇に当てる。その仕草のせいで、つい先ほどもメリフェトスと口付けを交わすはめになったことを、アリギュラは思い出した。

すっかり赤面してタジタジとなるアリギュラに、してやったりといった様子で、メリフェトスはにやりと笑った。

「おっと、我が君。今宵はキャロライン・ダーシーとの『遊び』に備えて、覇者の風格を見せつけてやるのでは? これぐらいで心を乱されていたら、悪役令嬢めに簡単に足を取られてしまいますよ。……っと、言っている傍から来ましたね」

 とっさに言い返そうとしたアリギュラだったが、メリフェトスに言われて慌てて言葉を呑みこむ。もとの余裕を滲ませた表情で振り返る。すると、攻略対象者のひとりであるジーク王子と、彼にエスコートされたキャロラインが、こちらにまっすぐ向かってくるのが見えた。