「見たまえ。さすが聖女様だ。そんじょそこらの魔術師とは、オーラが違う」

「先日のグズグリの襲撃も、ひとりで対処なさったんだとか」

「それだけではなく、毎日、癒しを求めて集まる民らを救ってくださっているそうだぞ」

「なあ、メリフェトス。聞こえておるか?」

 ひそひそと人間どもが感嘆の呟きを漏らす中を歩きながら、アリギュラはにやりとメリフェトスを見上げる。着飾ったアリギュラとは異なり、いつも通り聖職者としての服に身を包んだ腹心の部下に、異世界の魔王は皮肉げに目を細めた。

「わらわは、人間どもの間で大人気のようだな。おかしなものよの。こやつら、わらわが異世界で魔王をしていたと知ったら、腰を抜かして驚きよるだろうな?」

「今の我が君は、あくまで救世主ですから。異世界から召喚されたというプレミア価値がついている分、有難味があるのでしょう」

「ほれほれ。皆がわらわを誉めそやしておるぞ? ふふん。なんであれ、おだてられるのは悪い気がせぬな」

「そのようにございますね。まあ、聖女様のお力を借り受けして、迷える民らを救ってやっているのは私にございますが」

「ち、力の出どころはわらわじゃ! ゆえに、わらわの功績でも問題ないのじゃ!」