そうして迎えた、聖女召喚の祝賀パーティの夜。

 アルデール城は、魔王軍との戦時下とは思えないほど、華やかな雰囲気で包まれていた。

 集まっているのは、主に有力な家柄の者たち。そこに、兵たちを統率する一部の上級騎士や、一握りの数の王宮魔術師なども招かれている。

 王城の広いホールに集まった人々は皆、色とりどりのドレスや正装に身を包み、着飾っている。背後で流れるのは、王宮楽団らによる緩やかな演奏。けれども人々のほとんどはその音色に耳を傾けることもなく、グラスを手に和やかに談笑している。

まさに選ばれた人間たちによる、選ばれた人間たちのための宴。普段のアリギュラなら、鼻で笑い飛ばして終わっていただろう。

 けれども、今宵に限っては気合が違う。むしろアリギュラは、意気揚々と宴の席に足を延ばしていた。

 カツン、と。小さな足が踏み出した一歩から、高い音色がホールに響き渡る。

 なんとなしに音のした方向を見た出席者たちは、誰ともなしに口々に声を上げた。