おとゅめげえむ『まほキス』のジーク王子ルートにおける悪役令嬢、キャロライン・ダーシー。彼女との再会は、すぐに訪れるであろう。
メリフェトスの予想は当たった。知らせを運んできたのは、一通の書状だ。
「聖女召喚、祝賀パーティ??」
封を開け中身を確認したアリギュラは、眉根を寄せて手紙を摘まみ上げた。ひらひらと指先で手紙をもてあそぶ主をよそに、メリフェトスはいつも通り、生真面目に告げた。
「アリギュラ様にぜひ出席していただきたいと、人間どもが申しております」
「聖女召喚の祝賀というなら、わらわが主役じゃ。そら、いかぬわけにはいかまい」
ぽいっと手紙を机に放りだし、アリギュラは頬杖を突く。そして、不満げに顔をしかめた。
「救世主を持ち上げ、身内の士気を高めんとする、か。狙いは悪くないが、パーティとはな。士気を高めるなら、兵らをねぎっての宴であろう。敵に攻め入られるような有事においても、人間という奴らは呑気だな」
アリギュラ自身、何度となく宴を催し、自軍をねぎらったものだ。士気を高揚させるためには、適度なガス抜きも必要なのである。
けれども文面から察する限り、今回の宴はそういった種類のものではない。だからこそアリギュラは鼻白んだのだが、メリフェトスも同意して首を振った。