「キャロラインが登場するのは、主にジーク王子のルートです。ですが、ここは『まほキス』を再現した世界といっても、登場人物たちもすべて生身の人間。ルートと関係なくアリギュラ様と接点を持ったとしても、なんら不思議はありません」

「な、なるほど」

 納得しかけたところで、アリギュラははっと気づく。本当にあの娘が悪役令嬢キャロラインなら、おかしなことになるではないか。

「先ほどあの娘は、自分の婚約者がほかの女にうつつをしていると言っていたぞ? あやつがキャロラインなら、その婚約者というのは……」

「十中八九、ジーク王子ですね。そしてうつつを抜かしている相手というのは、確実にアリギュラ様です」

「はあ?」

 今度こそアリギュラは、顔をしかめた。ひらりと手を振って、アリギュラは否定する。

「王子ってのは、金髪のキラキライケメンのことじゃろ? あの者とは最初にちょっぴり話したっきり、これっぽっちもかかわりがないぞ。だというのに、あの者がわらわに惹かれるわけもなかろう」

「……やはり、お気づきではなかったのですね」

 重々しく、メリフェトスは息を吐きだす。きらりとモノクルを光らせた彼は、なぜか勢いよく、部屋の隅に積まれた大量のギフトボックスを指さした。