「おそらく、あの娘は『悪役令嬢』ですね」
アリギュラに聖女の力を借り受けしたメリフェトスが、勤めを果たして戻ってきたあと。二重三重にもわたるショックで、部屋の隅で膝を抱えていたアリギュラに、メリフェトスはさらりと告げた。
またしても飛び出す聞きなれない単語に、アリギュラはぴくりと動いた。
「なんだ、その。悪役令嬢とかいうものは」
「簡単に申せば、おとゅめげえむにおける恋敵です」
長い足を組んで椅子に腰かけながら、メリフェトスは口を開いた。
悪役令嬢は、ヒロインと攻略対象者の間に立ちふさがる恋の障害として登場し、物語を盛り上げる存在であるらしい。
『まほキス』においても、悪役令嬢は登場する。エルノア国第一王子ジークの婚約者、キャロラインだ。それが先ほどの娘ではないかと、メリフェトスは話す。