悪態をつきながら逃げ出そうとしたアリギュラを、むんずとメリフェトスが捕まえる。アリギュラの小さな身体を抱えてから、メリフェトスはモノクルの位置を治しつつ嘆息した。

「さあ、行きますよ。今日も今日とて、アリギュラ様の聖女の力を頼りに、多くの人間どもがこのローナ聖堂を訪れているんです。……おや?」

 そこまで言ったところで、メリフェトスは初めて、アリギュラのほかにもう一人娘がいることに気づいたらしい。彼が言葉を呑みこんだことで、アリギュラも自己紹介が途中で終わってしまっていたことを思い出した。

 ぽかんとこちらを見つめる娘に、アリギュラはぽかぽかとメリフェトスを殴った。

「ま、待て、メリフェトス! わらわは、この娘との話がまだ終わって……」

「聖女、さま??」

 呆けた表情のまま、娘が呟いた。

 なにやら娘の様子がおかしい。そのように戸惑いつつアリギュラが見ていると、娘は肩をふるふると震わせながらぶつぶつと呟き始めた。