イリアは優しく微笑むと、一つ大きく頷いてハッキリと言い放った。

「決めた。私、ネグルヴァルトが存在する意味を解明してみせる。私は女神ではないけれど、ドラゴンやこの場所のことを守りたい。あなた達の力になりたい」

一度決めたことにイリアは決して意思を曲げることはない。相手が答えに渋ったとしても、やり遂げると決めたからにはイリアはとことん追求し結果を追い求める。それがどんなに時間が掛かろうが、誰にも相手にされなかろうが関係ない。

ーーお父様が見つけられなかった、この答えを私は見つけたい。

真っ直ぐにヒューリを見つめていると、ヒューリは小さく笑ったかと思えば握りしめていた手に力を込めた。

「よろしく頼む、イリア」

その答えにイリアは嬉しくなって、全身の血液が早いスピードで駆け巡っているような感覚に一つ息をついた。こんな感覚になるのは、一体いつぶりだろうか。まだ両親がこの世にいた時に、様々な知識を経験をさせてくれた幼き頃にも同じように胸踊る日々がそこにはあった。

ーーそう言えば、こうやって誰かと一緒に語り合うの久々な気が……。

紅茶の湯気が消えるまで殿方と話せというあの難題を、今はこうも簡単に成し遂げてしまったことに拍子抜けしていた。おまけに、こんなに身内以外の異性とこんな近い距離感で話すのは中々した事の無い体験だった。

我に帰れば、自らヒューリの手を取って距離感を詰めていたことに気づき、イリアの体温は何故か急に上がった。バレるものかと、慌てて握っていた手を離し立ち上がって荷物の確認をするフリをぎこちない動きでしてしまう。

ーーな、なんで急に恥ずかしくなっちゃったんだろう……変なの。

熱い体を冷ますように優しい風が通り抜けていく。その風にそっと目を閉じて、心を落ち着かせる。ドクドクと響くその鼓動の音は、イリアは嫌いではなかった。

ただ妙に落ち着かないこの気持ちに違和感を覚えていると、その落ち着きに拍車をかけるようにヒューリが動く。

「それじゃあ、本格的に動くとしよう!行くよ、イリア!」

「……っ!!」

軽々とイリアを抱き上げるや否や、ヒューリはヴァイルの背中に乗ると風を読んだヴァイルの翼に手を当てた。そのまま大きな翼を広げ、洞窟内の奥へと進み始めた。