イリアにはやはり何一つとして読むことは出来ないが、この書物に書かれた通りドラゴンがいたということに頷くしかなかった。

「これは父の書斎から見つけたものなの。私にはさっぱり読めないんだけど、所々にドラゴンの絵が描かれているからきっとドラゴンについての本なんだろうなあって思いながらいたら、本当にドラゴンに出会って……って、どうしたの?」

書物からヒューリに視線を移したイリアは、ヒューリが書物をじっと見つめていることに気づき首を傾げた。

「古代語……マタトゥール語か?」

顎に手を添えながら何やら口をパクパクさせては、眉間にしわを寄せる動きを繰り返すヒューリ。そんなヒューリの動きを、イリアは知っている。

ーーあれは知識を絞り出している時の動作。と、言うことは……!

イリアはその本を抱きしめて、ヒューリの隣へとしゃがみ込み瞳を輝かせた。

「ヒューリ、あなたこれが読めるの?!」

「完璧にという訳ではないが……多少ならな。ただまだ解明されていない部分も数多いって噂なんだ。俺には解読は少しばかり難しいかな」

「そっか……残念。これが読めたら、あの森の存在する意味が分かる気がしたんだけど」

ロットが残した秘密の書物にはきっと何かが掴める重要なヒントが掴める、イリアはそう思っていた。