「俺たちはドラゴンの血を受け継ぐ者、ドラゴン・ブラッドの一族。会話は出来て当然の話だ」

何を当たり前な事を、と言わんばかりの表情でイリアを見つめるヒューリ。そんなヒューリに、イリアは貴方の常識は通用しないと首を横に振った。

「私には到底信じられない。というか、そもそもドラゴンがいることに驚きなのに」

「俺は地上で人が生活していたことが驚きだけどな」

「だってドラゴンよ?!伝説の生き物とされて、御伽噺にしか出てこない、あのドラゴンよ?!驚きしかないのはこっちの方よ!絵本で見て想像していたものよりも、遥かに美しくて私ビックリしてるんだからね?!あの鱗の光沢の美しさ、本当に素敵!」

大人しく地面に座り込む少女がいきなり言葉に熱を帯び始め、ヒューリは目を丸くした。だが、そんなイリアに向かって笑って見せた。

「あっははは。どうやら、俺は勘違いしていたらしいな。イリアは女神とは遠く離れた普通の女の子だ」

「あ……その、ごめんなさい」

いつもの縁談の時と同様に、イリアの熱のある語りに対してこんなに笑われたことは初めてで、少々歯がゆい気持ちがイリアを襲った。ただ悪い気はしない上に、どうやら女神という存在ではないということに気がついて貰えたようで、ほっと胸を撫で下ろした。

「謝ることはないさ。俺も勘違いしてしまってすまない。ただ俺もヴァイルもイリアに出会わなければ、地上で命を落としていただろう。イリアは俺たちの命の恩人だ」

「お、恩人だなんて!そんな大したことしてないの。ただ、そのヴァイルの翼の怪我に薬がすぐに効いて、主人をここへ無事に連れて帰ってきただけなんだよ、ね?」

ヴァイルに答えを求めると、嬉しそうに鳴いてイリアに首を伸ばしてきた。

「本物のドラゴンであることを証明したかった、らしい」

「ごめんね、最初は疑ったりして。でも私も半信半疑だったの。こんなに簡単にドラゴンに会えるとは思ってもみなかったから」

ヴァイルの顔を撫でながら立ち上がると、イリアは一緒にこの地へと運ばれてきた鞄の中からあの書物を取り出して見せた。