「ん。お前も飲んでみ。うまいから。今年の夏の新作だってよ」

 「ありがと」


 差し出されたストローをぱくりと咥え、そっと吸ってみる。爽やかな味、これはライチか。粒を噛んでみると、もちもちとした食感。ほどよい甘さが口の中に広がった。


 「うまいもんだな。初めて食べた」

 「流行る理由がわかるよな。癖になる」


 カロリー高いらしいし、おやつにはぴったりだ、と栗ちゃんが無心で粒を吸い込んでいく。カロリーが高いことを喜ぶなんて、さすがスポーツマン。世の女子が聞いたら怒りそうなセリフだ。

 それでも美味しいことには変わりない。時折それをもらって、小さな幸せに浸る。

 特に盛り上がったのは栗ちゃんの部活の話だ。俺は聞く方に徹していたけど、栗ちゃんは話すのが上手い。後輩のムカついた話も面白おかしく語ってくれた。

 ふと俺たちの会話が途切れたときに耳へ入ってきたのは、女の人の甘い声と、男の人の少し格好つけたような声。声高に「私たちは付き合っています」と言っているような会話に、胸がギュッと痛んだ。


 「なぁ栗ちゃん」

 「なに?」

 「俺さ、西さんのことほんとに好きなのかな」


 さっきまでの楽しい空気をぶち壊してしまった。こんなこと栗ちゃんに訊いても困らせてしまうに決まってる。突き放されたらどうしようと思って、ちょっとだけ怖くなった。おそるおそる視線を上げると、栗ちゃんはさっきと何ひとつかわらない顔でタピオカを吸っていた。


 「なんでそう思ったんだ?」