良い感じに栗ちゃんの見たかったものを見終わって、彼の手にはいくつかの紙袋が提がっていた。4割引にされていたタオルと、半額になっていたドリンクボトル。靴は高いから親にねだることにしたときりりとした顔で言っていた。


 「そろそろおやつの時間だな」

 「おやつとかいう響きすげー久しぶりだわ……。栗ちゃん案外可愛いとこあるんだな」

 「うるせぇよ。男子高校生は食わんとやってられんのじゃ」


 そういって、近くにあったタピオカ店に吸い込まれていった栗ちゃん。外で大人しく待っていると、店に続々とカップルたちが手を繋いで入ってくるのが嫌でも目に入る。


 「んっと、お待たせー、って、葵?」

 「あ、ごめん。ちょっとぼーっとしてた」

 「ふーん」


 ほどよい間隔で並んでいる円机に栗ちゃんとふたり座る。あたりは仲睦まじげに談笑する恋人たちであふれかえっている。

 収まりの良いところを見つけて、栗ちゃんの動きがぴたりと止まる。たぶん、考えていることは俺と同じだ。


 「なぁ葵。テキトーに選んだけど、ここ、ちょっとした地獄だな」

 「ほんとにな。圧ヤバい」


 それでも、いつも通りの涼やかな顔を保っているのだから、イケメンはすごい。栗ちゃんが透明な液体を吸う。タピオカって黒いものだけだと思ってたのに、目の前のものは黄色だ。何味かわからない透明なジュースに、黄色の粒がふよふよ泳いでいる。