「あおいーーーー! そっち投げっぞーー!!」


 なんで俺ばっかり走らされるんだよ!!


 「ちょい待てって!!」


 ディフェンスを華麗なドリブルさばきで翻弄しながら俺がゴール下にたどり着くのを笑顔で見守る栗ちゃん。

 超絶楽しそう。

 ロングパスを受け取ってゴールにボールを放った瞬間、試合終了を告げるブザーが鳴った。

 結果は68対23で俺たちの勝ち。


 「いえーい! やったぜ」

 「大人げねぇ……現役バスケ部の強肩マジやめろよな。何回も死にかけた」

 「そぉ? いい動きしてたぜ、葵」


 ベンチに戻って勢いよく水筒を傾ける栗ちゃん。ほんと、びっくりするくらいかっこいい。

 これは余談だけれど、普通は2クラス合同で体育の授業はやるものなんだけれど、なぜか今年は1組と7組、3組と4組、5組と6組が合同、2組が単独で授業を受けることになったせいで、俺たちが体育館を使うときはいつも人口密度がおそろしく低い。


 「じゃあ次、女子ねー。ひとり足りないから宗谷くんお願い!」

 「はぁぁっ!?」


 こういうことが普通に起こるわけだ。体調不良により見学者が出るとゲームをするための人数が足りなくなる。俺、ほんと良いように使われてるな。


 「いや、俺さっき試合出てたから疲れてんだけど……」

 「ハンデハンデ。お願い!」


 そういわれると弱い。走れないこともないし、女子のゲームならまだ大人しいからなんとかなるか。


 「……わかった」


 しぶしぶベンチから立ち上がる。メンバーを見てみると、相手チームに現役女バスキャプテンがいるけど、まぁそれくらい。俺のチームにいる人たちは全員文化系の人たちばかりだから、ほとんど勝算はない。


 「宗谷ぁ、手ぇ抜いたら承知しないから」


 俺と大して身長の変わらない女バスキャプテンが、試合前にも関わらず両手を広げてディフェンスをしてくる。

 こわ。キャプテンこわ。


 「俺を煽るのはいいけど味方のこともちゃんと考えてやれよ」

 「んー? 努力はするけど」


 ダメだ、完全にハンターの目をしてる。


 そのあとのゲームは……まぁ結果は誰もがわかってたことだ。

 キャプテンが独走して、俺も善戦。チームメイトがついてこられなくて外野から怒られた。

 俺悪くねぇし!